「テロリストの処方」久坂部羊著
公的医療保険の滞納世帯の増加に伴い、医療が富裕層向けの高級医療と一般向けの標準医療に二分。広がる格差への不満が社会に充満する中、高収入のセレブ医師の命を狙うテロが続発する。そのさなか、元医師で、現在は医事評論家として活躍する浜川の医大時代の同級生・狩野が、医師の全国組織の総裁に就任する。
就任早々、医療改革を掲げる狩野にテロリストから脅迫状が届く。浜川は、狩野からテロ現場や脅迫状に書かれた「豚ニ死ヲ」のフレーズに実は見覚えがあると告白される。同期の塙が学生時代に書いた教授の不正を告発するビラに同じ言葉があったというのだ。浜川は狩野に頼まれ、塙の行方を捜し始める。
日本の医療の行方を予見するようなミステリー。
(集英社 620円+税)