「怪物の木こり」倉井眉介著
「ぶっ飛んだ設定のおもしろさ」が審査員に評価され、2019年「このミステリーがすごい!」の大賞を受賞した話題作だ。
森の洋館に住む女マッドサイエンティストが逮捕される。裏庭から多くの幼児の遺体が見つかり、生きていた4人が保護された。怖い絵本のようなこの事件から26年が過ぎて――。
主人公の二宮彰はサイコパスの辣腕弁護士。もう何人も人を殺している。ある日、自宅マンションの地下駐車場で、怪物マスクを着けた何者かに斧で襲われ、頭に重傷を負った。ぼんやりした頭で二宮は誓った。
「あいつは必ず俺の手で殺してやる」
一方、刑事の戸城嵐子は、ある殺人事件の現場にいた。犯人は被害者の頭を叩き割り、脳を持ち去ったらしい。これは同様の手口の連続殺人事件の始まりだった。
物語の鍵は怪物と斧と脳。頭にケガをした二宮は、手当てした医者から、おかしなことを言われる。頭に「脳チップ」が埋め込まれていて、それが壊れた可能性がある、というのだ。脳チップ? なんだ、それ? 身に覚えがない二宮は戸惑うが、事件を境に、自分に人間らしい感情が芽生えていることに気づく。もしかして、自分はつくられたサイコパスなのだろうか。
二宮の自分探しと戸城の犯人捜しが同時進行し、脳チップという架空の医療技術をめぐる恐るべき犯罪の真相が明らかになる。
(宝島社 1380円+税)