「コロナが加速する格差消費」三浦展著
格差加速
著者は80年代から消費の最前線を見てきたマーケッター。「下流社会」など数々の流行語も編み出した。しかし今回のコロナ禍は自分にも「大打撃」という。若者たちのシェアハウスなど人のつながりによる「第4の消費」を唱える著者にとって「社会的距離」は真逆の試練だ。
モノを買うより体験などのコトを買うという「コト消費」。カリスマ店員や下町のガンコ親父など、特定の場と人物の組み合わせが人気を呼ぶ「ヒト消費」。これらもコロナで大減速せざるを得ない。小さな下町の居酒屋などで閉店が相次いでいるのはその表れだ。
ベテランマーケッターらしく本書は細部が面白い。「昭和」を求めて大宮まで足を延ばし、カップ麺や緑茶の消費と世代や「上流志向」の変数を掛け合わせた分析など、彼に続くマーケッターよりずっと読み応えがある。それだけにコロナの打撃に戸惑う本書の筆致は、事態の深刻さの表れだろう。格差が加速する一方、社会全体が下流化する。そんな暗い未来が行間から見えるようだ。
(朝日新聞出版 810円+税)