「武器としての『資本論』」白井聡著

公開日: 更新日:

格差社会

 新型コロナ禍で耳にする「経済が回らない」というおびえた声。しかし、それは本当か。その発想は「市場経済」しか見てないからではないだろうか。満員電車で押しつぶされながらの通勤に疑問を感じた人は多いだろう。今回のコロナ禍はさまざまな疑問を拡大させた。

 そこで浮かぶのが「市場経済」や「商品経済」を根底から問いかけたマルクスの古典。本書は「永続敗戦論」で戦後日本の不毛さを鋭く論じた政治学者による「資本論」講座だ。

 たとえば市場原理を説く新自由主義。高度成長期にもてはやされた家族主義的な日本企業方式を「時代遅れ」として雇用の非正規化を進めたのが新自由主義だが、マルクス主義の立場から見るとこれは「資本家階級の側からの階級闘争」なのだという。「1億総中流」型経済が行き詰まったとき、資本家が逆に格差を広げるために行った反革命だというわけだ。

 コロナ禍で格差は拡大するという。「剰余価値」「本源的蓄積」などの概念や発想を大胆に応用する本書は未来を開く若者世代にもよさそうだ。

(東洋経済新報社 1600円+税)

【連載】ウィズコロナ時代 本で読み解く経済の行方

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が