「ベルリンに堕ちる闇」サイモン・スカロウ著 北野寿美枝訳
1939年12月、戦時下のベルリン。ゲシュタポ局長のミュラーに呼び出された刑事のシェンケは、別の管区で発生した殺人事件の捜査を命じられる。
被害者は元女優で、ナチス党の古参党員の妻・ゲルダだった。どうやらミュラーは、党内の派閥間の摩擦を避けるため、党員でないシェンケに捜査を任せることにしたらしい。事件の真相が明らかになり、その内容が党の体面を傷つける場合はシェンケを処分するつもりなのだろう。
駅の車両基地で見つかったゲルダは、頭を殴打されレイプされていた。夫・グスタフによると、ゲルダはユダヤ人の血を引いているが、党内の有力者の力を借りて帝国市民権を得ていたらしい。
ナチス政権下のベルリンを舞台にした長編歴史ミステリー。
(早川書房 1562円)