「蟻の棲み家」望月諒子著
東京都中野区で拳銃を使用した連続殺人事件が発生。被害者の2人はともに若い女性で、売春で生計を立て、1人は幼い子供を施設に預けっ放し、もう1人は育児放棄の状態だった。事実を伝えられないマスコミは被害者の虚像を報道する。
同じ頃、フリーライターの美智子は弁当工場を舞台にした恐喝事件を取材。工場長・植村は、私費で犯人に金を振り込んでいた。そんな中、美智子は植村から新たに届いた脅迫状を見せられる。3人目の犠牲者を出したくなければ2000万円を用意しろと拙い字で書かれた脅迫状には、若い女の写真と髪の毛が添えられていた。植村は本社から無視するように指示されたが、放っておけずに美智子に連絡したようだ。
格差社会と家庭崩壊が生み出した社会の暗部に切り込む長編ミステリー。
(新潮社 825円)