「新しい教養としてのポップカルチャー」内藤理恵子著
著者のもつ教養人のイメージに近いのは漫画家のジョージ秋山だ。彼は古典的な教養に懐疑的な視点をもっていたからだ。彼の作品「ドストエフスキーの犬」の中で、小学生の淳の飼い犬のジロがドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を拾ってくる。淳の母親は女学生の頃、この作品を読んでいたら、こんな田舎にくすぶっていなかったと言い、教師は「若い時にドストエフスキーくらい読んどかにゃいかんぞ」と言う。だが、教師は実際には読んでいなかったのではないか。著者はジョージ秋山が当時のインテリ層に違和感を抱いていたと受け止めた。
他に、アニメ、ゲームなどを独自の視点で裁断する。
(日本実業出版社 1980円)