「落語で資本論」立川談慶著 的場昭弘監修・解説
「落語で資本論」立川談慶著 的場昭弘監修・解説
談慶の師匠だった立川談志は「落語のテーマは飢えと寒さである」と定義した。
落語の登場人物は「飢えと寒さ」を分かち合いながら、そこから抜け駆けするような、銭を貯め込んだり、金儲けに走る人間を嫌い、彼らのなかに「宵越しの金は持たない」という価値観が生まれた。また、壁が薄くて隣の家の声が筒抜けで、トイレは共同便所というストレスがいっぱいの環境で生活していたことから、他人の気持ちを「忖度」するようになる。
この2つが融合して、金儲けを拒絶する社会が生まれたのに、明治になると「労働力が商品になる」という経済システムが出現する。江戸っ子はそういう社会が到来することを予感していたのではないか。
経済学部出身の落語家が、落語をネタにマルクスの「資本論」に挑む。
(日本実業出版社 1980円)