立川談慶(落語家)
12月×日 2年ぶりに大分は佐伯へ。ここ20年毎年呼んでいただいていたのだが昨年はコロナ禍でキャンセルとなったので久しぶりの感。飛行機の中ではコンソメスープを飲みながら、立川談志著「作家と家元」(中央公論新社 990円)を読む。今年は談志の没後10年。なんだかあっという間だ。
この本は談志と談志に近かった一流の作家との対談集だが、若き頃より肝胆相照らす仲であった石原慎太郎氏との対談がずば抜けて面白い。
「そういや慎太郎の奴、裕次郎が具合が悪くなった途端に、自衛隊の飛行機使わせたそうだけど、あれはよくないんじゃないですか? 俺がそう言ったら、あいつ、『自衛隊が警察に協力するのは当たり前じゃないか』って。『西部警察』は本当の警察じゃないって、知らないのかね、あの野郎は」の箇所に大爆笑(CAさんが振り返るほど)。
石原さんにあそこまで言えるのは談志しかいなかった。石原さんも談志に突っ込まれることで、アウフヘーベン的に軌道修正できたのではと想像。そんな石原さんも保守系政治家としての談志のポテンシャルな手腕に期待を寄せていたと言っていた。
ほか、伊集院静氏との「カネを唾棄する者同士」の丁々発止、阿佐田哲也氏との兄弟会のようなやり取りなど、言葉の達人達との談志との会話は再読しないと捕捉できないほどの飛躍だ。まだ談志は心の中で生きている。
12月×日 甲府で出版記念落語会。「あずさ」の車中で山口周、楠木建著「『仕事ができる』とはどういうことか?」(宝島社 980円)、スマイリーキクチ著「突然、僕は殺人犯にされた」(竹書房 770円)、中野信子著「ヒトは『いじめ』をやめられない」(小学館 858円)を交互に読む。
本は同時進行に読むに限る。このスタイルが自分に合っているような気がする。そしてその合間に来年出版予定の本の打ち合わせを若き優秀な編集者とメッセンジャーでやり取り。長距離移動のほうが事務仕事がはかどるのは子供の頃から落ち着きがないからと言われてきたことにもつながる。多読乱読速読。落ち着きのなさは私の数少ない「才能」なのかもしれない。