「パリの空の下 ジャズは流れる」宇田川悟著

公開日: 更新日:

「パリの空の下 ジャズは流れる」宇田川悟著

 20年ものパリ生活で、フランスの音楽について取材を続けてきた著者によるフランスジャズ変遷記。ジャズという音楽を単体でとらえるのではなく、文学、舞台、ファッションなどとからみあいながら成熟へと進んでいった過程を、自身の回想を加えながら立体的な物語へと紡ぎあげている。

 フランス植民地時代の影響下にあった米国南部のニューオーリンズで、奴隷としてアフリカから連れて来られた黒人の日常とフランス文化が融合した結果、ジャズという独自の音楽が生まれた。その後商業用レコードの発売が始まり、クラシック中心だった本国フランスにも20世紀初頭の波が押し寄せる。

 ジャズの普及の中心人物となったのは、自らジャズバンドのドラムも叩き、映画音楽にもジャズを使うほど心酔していたジャン・コクトーだ。作曲家エリック・サティやクロード・ドビュッシーを巻き込み、日本から渡仏した大杉栄や林芙美子、美輪明宏もその影響を全身で浴びた。

 異質の音楽として出発したジャズが、芸術の王道を歩むようになった経緯と、それにかかわった人々の人間模様がたっぷり楽しめる。

(晶文社 3960円)

【連載】木曜日は夜ふかし本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  2. 2

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  3. 3

    中森明菜が16年ぶりライブ復活! “昭和最高の歌姫”がSNSに飛び交う「別人説」を一蹴する日

  4. 4

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  5. 5

    田中圭“まさかの二股"永野芽郁の裏切りにショック?…「第2の東出昌大」で払う不倫のツケ

  1. 6

    大阪万博会場は緊急避難時にパニック必至! 致命的デザイン欠陥で露呈した危機管理の脆弱さ

  2. 7

    永野芽郁「二股不倫」報道で…《江頭で泣いてたとか怖すぎ》の声噴出 以前紹介された趣味はハーレーなどワイルド系

  3. 8

    レベル、人気の低下著しい国内男子ツアーの情けなさ…注目の前澤杯で女子プロの引き立て役に

  4. 9

    永野芽郁“二股肉食不倫”の代償は20億円…田中圭を転がすオヤジキラーぶりにスポンサーの反応は?

  5. 10

    芳根京子も2クール連続主演だが…「波うららかに、めおと日和」高橋努も“岡部ママ”でビッグウエーブ到来!