「レシート探訪」藤沢あかり著
「レシート探訪」藤沢あかり著
買い物をするたび店から渡されるレシート。店名や日付、品名、金額が記されたそれを見直すと、その場で会った人や話したこと、当時の気持ちや情景が浮かび上がってくる。著者は、そんなレシートを手掛かりに、2020年5月末から23年1月にかけて26人それぞれの暮らしを訪ねてみた。本書は、レシートという紙片から、人々の日常を掘り起こそうと試みた生活の記録集だ。
たとえば、「ヨーガンレール」のプレス担当者に見せてもらったある日のレシートには、豚、鶏、レバーなどの肉類を計9パック購入したことが記されていた。聞けば、そのほとんどが大切にしている犬のごはんを自家製で作るための肉で、レシピはかかりつけ獣医直伝のものだというのだ。
買い物には、その人の意思決定や大切にしたいものが隠れていたのだ。
ほかにも、新聞を毎日買って読むのと銭湯通いが習慣になっている傘職人のレシートや、著者の息子が初めてのおつかいをしてくれた際にもらった捨てられないコンビニのレシートなども紹介。
普段見過ごされてしまいそうな日常が、レシートごしに見えてくるのが面白い。
(技術評論社 1760円)