著者のコラム一覧
井上理津子ノンフィクションライター

1955年、奈良県生まれ。「さいごの色街 飛田」「葬送の仕事師たち」といった性や死がテーマのノンフィクションのほか、日刊ゲンダイ連載から「すごい古書店 変な図書館」も。近著に「絶滅危惧個人商店」「師弟百景」。

キャッツ ミャウ ブックス(西太子堂)実用書から小説、エッセー、絵本まで猫づくし

公開日: 更新日:

 西太子堂駅からの道すがら、おや? 邸宅が集合住宅に変わっていた。一方、あの頃、リノベほやほやだった白い建物の猫本専門店「キャッツ ミャウ ブックス」が、すっかり「昔からの景色化」しているように思えた。私はこの店の開業への道のりと、2018年の開店当初の様子を明かす「夢の猫本屋ができるまで」を書くため、かつて度々訪れた。今日は4年ぶりの訪問だ。

「お元気でしたか」

「まあなんとか」

 店主・安村正也さんと挨拶もそこそこに、「勝手知ったる」のつもりで約10坪の店内を一巡り。途中、目が合ったのは、「猫の文学館」「猫が歩いた近現代」「世界の街猫」「親父と猫」「セカンドキャリア」……。棚の趣に変化あり、と見た。実用書から猫の出てくる小説、エッセー、ノンフィクション、絵本まで並ぶのは変わらないが、以前は古本と新刊がほぼ半々だったのに、今は新刊が多いような。

「そう。日販(取次大手)と契約できて、9割がた新刊にシフトしました」

売り上げの10%を保護猫活動団体に寄付

 古本の方が利益率は高いのに? と、旧知ゆえのぶしつけ質問、お許しを。

「ウチ、売り上げの10%を保護猫活動団体に寄付しているでしょ。なので、売り上げの数字を上げたくて」

 なるほど、腑に落ちる。そんな話を“猫店員”こと店の猫たちが、寝そべって聞いてる! 世の中的に猫本は増えています?

「ええ、おそらく。猫本ブームは終わって定着。“ペットの飼い方”といった曖昧な内容ではなく、病気を扱うにも腎臓病で一冊、がんで一冊と内容が細分化されてきましたね。あと、猫も長生きになり、“高齢猫との暮らし方”“猫の終活”的な本が増えました」

 この日、安村さんが熱く語ってくれて、愛猫家へのプレゼントにしようと買ったのが「猫が食べると危ない食品・植物・家の中の物図鑑」。一人出版社の「ねこねっこ」刊。獣医の監修付きだ。チューリップやユリも要注意だったなんてー。そしてもう一冊、「ねこのまちがいさがし」も。よく似た可愛い猫の写真が2枚ずつ載っているが、微妙に5カ所が違うので、間違い探しをという、癒やされる脳活本。これは自分用に。そろそろお年頃なので。

世田谷区若林1-6-15/℡03・6326・3633/東急世田谷線西太子堂駅から徒歩2分/営業時間11時~19時、月・火曜休み

ウチらしい本

「まんがパレスチナ問題」山井教雄著

「著者は、『AERA』などで30年以上政治漫画を描いてきた人。これ一冊で、ユダヤ教やキリスト教などの発祥から今日に至る歴史の基本を知ることができます。なぜ、ウチに置いているのかというと、ユダヤとパレスチナの少年に加えてエルサレムの猫がガイド役だから。すべてがつながって、今、ガザのジェノサイドが起きているわけで、05年刊の本だけど今こそ読み時です」

(講談社 990円)

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