POTATO CHIP BOOKS(立石) タイトルと装丁から直感で選んだ“一冊入魂”本が約1000冊
京成立石駅を降りる。一部が再開発中なのが勝手ながら残念だが、“飲み屋天国”の町は商店街だって渋い。その先を右に折れたら、風呂屋か飲食店か? みたいなオレンジ色の暖簾がかかっている。お邪魔します。
と、紙と建材が合わさったような、いい匂いがふわり。
「よく言われます。私はずっといるから、もう麻痺しちゃってますけど(笑)」と、店主の長島亜希子さん(41)。2022年11月にオープンした約10坪の新刊書店だ。
一等地の平台に、「京成押上線物語」「千ベロの聖地『立石』物語」「みんなの立石物語」など地元の本がずら~り。長島さん、地元っ子ですか?
「いえ、宮城からの上京組です。10年ほど前から葛飾に住むようになって」
前の住まいが「夫の転勤で行っていた関西」。それも芦屋だったと。対して、葛飾は「子どもを連れていると、ご近所の人たちがお菓子をくれる。う~、懐かしい」。あ、長島さんはデザイナー。コロナ禍に在宅勤務となって、「もしかしたら何かできるかも」のひらめきが、「子どもから大人までお気軽に」のこの本屋さんになったそう。
ゆったりの配置で、在庫1000冊。子ども向けの絵本、料理本、エッセーもあるが、社会、自然、文芸など幅広い分野が揃っている。
面陳列が多く、私の目にストレートに飛び込んできたのは、「社会問題のつくり方」「現代落語論」「A RAIN DOG」「計算する生命」「わかりやすさの罪」「小さき者たちの」「きれいな石の図鑑」。選書はどのようにして?
「“一冊入魂”なんです。タイトルと装丁から直感で選んでいます」
なんと大胆な。しかし、そこにはいくつもの熱い思いが。
お客さんに対して「ウチにはこんなにたくさんの本を置いているのに買わないの?」と思いたくないから、在庫1000冊にとどめ、「町の本屋」であるために、小出版社の本を増やしすぎず、大手版元の本もしっかり置く。やわらかい本から、少し硬派な本へ誘導したい……などなど。私はうなずきまくった。
「猫、好きですね?」「徘徊する方ですね?」と聞くと、長島さん「はいっ(笑)」。彼女の趣味嗜好が丸ごと反映と思える棚もあり、うん、なんだかいい。
◆葛飾区立石7-3-5-102/京成押上線京成立石駅から徒歩3分/火~金曜10時半~16時半、土曜11~18時、日曜・月曜休み
ウチらしい本
「芝浦屠場千夜一夜」山脇史子著
「著者は芝浦屠場の取材に行ったんですが、その魅力にとりつかれ、働くことになる。芝浦屠場で出会った人、出来事、感じたことを書いた、ルポとエッセーの間みたいな本だと思います。肉の描写が美しいんです。働く人たちの真摯な思いがあって、みんなが口にする肉ができるというか……。屠場に偏見を持つ人にも向けた本かも。ぽつぽつと売れます。私が“念”を込めているから(笑)」
(青月社 1650円)