「私の身体を生きる」西加奈子ほか著
「私の身体を生きる」西加奈子ほか著
私は30代半ばまで無難な服だけを着ていた。つまり、私の外見の主体は「私以外」だったのだ。ジーンズやスニーカーは女性としての自分を損なうものだという刷り込みがあったからだが、ある日突然、その「鎧」が必要なくなった。妊娠適齢期を過ぎて体が急速に変化しはじめ、「若い女」ではなくなって、私は「私」になったのだ。
昨年末、初めて私は自分のために指輪を買った。結婚指輪を買ったとき、その結婚指輪には「私」がいなかった。長い時間をかけてそのように教わってきたからだ。(島本理生「Better late than never」)
ほかに金原ひとみら、17人の女性が自分の体について言葉をつむいだエッセー。
(文藝春秋 1650円)