「おまじない」西加奈子著
小6のすみれの家に仕事で上京する祖父がひと月滞在することになった。大学教授の祖父は、いつもおしゃれで上品で、3年前に妻を亡くしてからも長野で一人暮らしをしている。祖父はホテル暮らしをすると言ったのだが、ママが強引に自宅に招いたのだ。
話が決まってからママは準備に余念がない。そしてついに祖父がやってきた。すみれは決して祖父のことが嫌いではないが、ママに合わせて大歓迎するふりをしていると、疲れてしまう。半月ほど経ったころ、祖父も同じ気持ちだと知る。あれほど上品だった祖母も、祖父には悪態をついていたらしい(「孫係」)。
本音を明かせず家族や人間関係に引きずられながら生きる女性や少女の背中をそっと押す珠玉の「おまじない」がちりばめられた短編集。
(筑摩書房 682円)