「憐憫」島本理生著
10代前半から子役として活躍していた沙良は、20歳のとき、自分が稼いだ金が家族や親族に浪費され、ほとんど残っていないことを知った。ひどい拒食症になったりして、気がつくと29歳。かつての輝きはもうない。
プロデューサーをしている夫との仲もギクシャクしている。六本木で飲んでいた時、隣のテーブルにいた柏木と目が合った。なんて奇麗な男の人だろう。憐憫(れんびん)が洪水のように押し寄せてきた。
2度目に会った時、柏木は、ある日突然、失踪したいと思うこともある、と言った。急に抱きしめたくなって、沙良は柏木をホテルに誘う。ある時、沙良が女優だと打ち明けた後、柏木からのメールがこなくなった。
恋愛小説の名手が描く、切ない大人の恋物語。
(朝日新聞出版 1540円)