第172回芥川賞・直木賞が決定!社会問題、哲学、科学などに挑んだ意欲作
第172回芥川龍之介賞と直木三十五賞の選考会が15日、東京都内で開催され、芥川賞には安堂ホセ氏と鈴木結生氏の2人が、直木賞には伊与原新氏が選ばれた。受賞3作品ともに骨太のテーマが据えられていることが印象的だ。
芥川賞を受賞した安堂ホセ氏は、デビューから3作続けて候補に選ばれ、“三度目の正直”を果たした。受賞作「DTOPIA」は、南の島を舞台に世界各地の美男美女が参加する恋愛リアリティーショーを題材にしながら、人種やジェンダー、セクシュアリティーなど現代社会が抱える諸問題に鋭くメスを入れる。
もう一人の芥川賞受賞者である鈴木結生氏は、福岡県・西南学院大学の現役大学院生で、今回が初のノミネート。受賞作「ゲーテはすべてを言った」は、ゲーテ研究者が自分の知らないゲーテの名言に出くわし、その出典探しに奔走する物語。「学問とは何か」「創作とは何か」など、深遠な問いを読者に投げかける。
また、直木賞を受賞した伊与原新氏は、地球惑星科学の研究者から作家に転身して15年目で悲願を達成。受賞作「藍を継ぐ海」は各地の田舎町で大切なものを守り続ける人々を描いた短編集。ほっこり系と思いきや、元研究者の著者らしい科学的知見とうんちくで好奇心を刺激しながら、“人間と科学”の関係性を描き出す。
順にテーマを抜き出すと「社会問題」「哲学」「科学」。まるで大学の講義のような本格的なテーマに挑戦した意欲作がそろった。腰を据えてじっくり読みたい。