「滅私」羽田圭介著
「滅私」羽田圭介著
32歳の冴津は、できるだけ所有物を少なくして、身軽な暮らしを提唱するウェブサイト「身軽生活」を運営。自らも、極力、モノを持たず、家にあるものはボールペンの本数にいたるまで把握している。
そんなある日、自宅に覚えのない荷物が届く。届いたのは、額装された胎児のエコー写真だった。住所を頼りに差出人を訪ねると、山梨で過ごした高校時代に3回だけ寝たことがある綾音の弟・更伊が現れる。家庭が崩壊した責任が姉を妊娠させた冴津にあると信じ込んでいるようだ。
しかし、綾音は複数の同級生と寝ており、冴津は責任を感じたことはない。更伊はほかにも冴津の人に知られたくない過去の証拠を握っているようだ。数日後、更伊は冴津の仕事場にまで現れる。
ミニマリストを襲う不穏でスリリングな物語。
(新潮社 572円)