「覇王の船」岩室忍著
「覇王の船」岩室忍著
神島の海に巨大な船が姿を現した。固唾をのんで見守る船大工たちの前で、船はすうっと海に滑り込み、自ら水平を保って浮いた。船体に鉄の鎧をまとい、織田木瓜の旗を船尾にはためかせている。それは信長が造らせた鉄甲船だった。
天下布武をもくろむ信長は、木津川沖で九鬼水軍が村上海賊に惨敗したことを知る。木造船が焙烙(ほうろく)玉の攻撃に弱いと知り、ひそかに総矢倉に総鉄張りの巨大な船を造らせたのだ。
信長の命により鉄甲船の建造に携わった九鬼嘉隆は、この鉄甲船こそ「覇王の鉄の船」だと笑みを浮かべた。信長はこの船7隻で村上海賊700隻と戦うという。
ヨーロッパに先駆けて信長が海に浮かべた〈鉄甲船〉誕生を描く歴史小説。
(祥伝社 2310円)