<第4回>絶食して撮った冒頭のラーメン、カツ丼シーンの迫力
確かに、ほんの2、3分のシーンのために2日間、絶食する俳優はいない。しかし、それをやるのが高倉健だ。
映画の撮影中、高倉は山田監督にひとつ質問したことがある。
「山田監督に芸術とはどういうものだと思われますかと聞きました。監督の答えは次のようなものでした。
『芸術とは何度見ても聞いても飽きがこない。それだけでなく、それに接した人が、自分も自分の世界で頑張らなきゃいけないと励まされる。それが芸術ではないでしょうか』
私(高倉)は演技だって、そういうもんじゃないかと思います。大声で訴えかけなくとも気がこもっていれば観客に伝わります」
同作品を見ていると、どうしても、醤油ラーメンとカツ丼を食べたくなる。
▽のじ・つねよし 1957年生まれ。美術展のプロデューサーを経て作家活動へ。「サービスの天才たち」(新潮新書)、「イベリコ豚を買いに」(小学館)など著書多数。最新刊は「アジア古寺巡礼」(静山社)。「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社)が話題に。