「花燃ゆ」陰の主役 松陰が最も信頼寄せた楫取素彦の生き方
幕末の志士たちの活躍を描いたNHK大河「花燃ゆ」がスタートした。主人公は、井上真央が演じる吉田松陰の妹・文。ただ、この物語には陰の主役がいる。文の夫で、吉田松陰が最も信頼した楫取素彦(かとりもとひこ=小田村伊之助、配役は大沢たかお)である。
「楫取素彦は、明治維新の立役者のひとりでありながら、スタンドプレーやハッタリといった、今の政治家が行うようなことを最も嫌った人物でした」
こう言うのは、のちに群馬県令(知事)となる楫取素彦の研究者で、群馬県議の中村紀雄氏だ。
楫取は歴史の表舞台にこそ顔を出さないが、桂小五郎(木戸孝允)に坂本龍馬を紹介し、薩長同盟の道筋をつけたキーパーソンである。派手さこそないが、堅実で実直な人柄。「オレが、オレが」で出世していく今の時代の打算的なサラリーマンとは、ひと味もふた味も違う魅力的な人物である。
楫取は文政12年(1829年)、長州藩の藩医の次男として生まれた。16歳で藩校・明倫館に入学。秀才として誉れ高く、22歳で江戸修行を命じられた。