識者が見たNHK朝ドラ「まれ」 好発進に“5つの要素”と分析
【連載コラム 「TV見るべきものは!!」】
先週からNHK朝ドラ「まれ」が始まった。ひと山当てることばかり考える父親(大泉洋)、それを支える母親(常盤貴子)と共に能登へ移住してきた娘・まれの物語だ。
“ダメおやじ”の影響か、まれはデッカイ夢が嫌いで、地道にコツコツが信条の高校生に成長。この設定が効いている。夢を持つことを自分に禁じたヒロインが、やがて本来の夢に向かって歩み始める。いわばマイナスからの出発であり、見る側も応援したくなるのだ。
また現代劇ということもあり、気軽な気持ちで見ることができる。前2作の「花子とアン」や「マッサン」に共通する、実在の人物をめぐる“縛り”のようなものがないからだ。むしろ「あまちゃん」を思わせる笑いとツッコミ、全体が明るいコメディータッチであることも悪くない。
次はキャストだが、主役の土屋太鳳(写真)は期待の本格派。4年前、長谷川博己をブレークさせたドラマ「鈴木先生」(テレビ東京系)でも、突出した存在感を示していた。今どきのアイドルタイプとは異なる、骨太な若手女優だ。
脇役陣も充実している。特に祖父母代わりを演じる、舞踏家の田中泯と田中裕子。この老夫婦の組み合わせが何とも絶妙だ。田中裕子の「自分の生きる場所は、自分で守る」といった言葉も潔い。いいドラマには、必ずいいセリフがある。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)