「隣に座ってもいいかな?」ゆきずり不倫沼にハマる女を救った意外な人物 #3【不倫依存~婚外恋愛を謳歌する男女】

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コクハク

これまでのあらすじ

【不倫依存~婚外恋愛を謳歌する男女】

 咲子さん(30歳日系CA/独身)は、子供時代から「かわいい」と言われて育った美女だ。大学卒業後、大手エアラインのCAとなってもその美しさから「会社の顔・広報要員チーム」として活躍。しかし、年齢が上がるにつれ、若さと美貌を持つ後輩たちにその座を奪われショックを受ける。

「老いへの怯え」そして「女としてのプライド」が、元同期CAの夫と「ゆきずり不倫」へと駆り立てた。その後も咲子さんは男漁りを続けて…。

 前回までの話はコチラ→第1話第2話

老いに怯えて既婚男性を狙う日々

 咲子さんは語る。

「同期CA・菜々美の夫を寝取ったときは『勝った!』『私も女としてまだまだ通用する』と誇らしさに満たされました。広報要員の若手CAは増えるばかりで居場所がありません。反面、私を『広報要員のレジェンド・咲子さん』と呼ぶ声も少なくなかった…だからこそ、女としての価値をますます確かめたくなったのが正直な気持ちです。寿退社をして『家庭の主婦』という地味なポジションに成り下がるのはあり得なくて…」

 こうして「老い」に怯える咲子さんは、フライト後やオフの夜、一夜限りの不倫相手を求める日が続く。相手は「既婚者男性」のみだ。

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男を落とすテクを磨き続けて

「私はラグジュアリーなバーや高級ホテルのラウンジに通い続けました。高級店を選ぶのは、経済力のある男が来る確率が高いから。前回はカクテルのグラスを倒して、男を惹きつけるベタな手を使いましたが、回数を重ねるごとに親密になるコツを掴んだんです。たとえば、単独で来た男性に、

――〇〇さんですよね? お久しぶりです。

 わざと、知人を装ってにこやかに声をかけるんです。当然、男性は『人違いですよ』と告げ、

――失礼しました。あまりにも似ていたので…邪魔しちゃってごめんなさい。

――人違いでもあなたのような美しい人に声をかけられて嬉しいな。

しだいに虚しさを感じるように…

 そんな会話から親密になっていたこともありますし、スマホを耳に当て、『えっ、ご主人の体調が悪いの? 私は構わないから、今夜はご主人についてあげて』と、いかにもドタキャンされた風を装って、男性と懇意になった時もあります。

 結婚指輪をしている男性はもちろん、会話の中から既婚者であることを突き止めて寝取っていきました。4~5人は相手をしたでしょうか。最初こそ優越感に浸っていましたが、次第に虚しさに包まれるようになりました。

 男たちは私を賞賛しましたが、それは一時(いっとき)の火遊び。帰る家庭があり、守るべき家族がいるんだって…」

新宿のバーで出会った男

 そんなある日、思いがけないことが起こった。

「いつものようにバーでひとりで飲んでいたんです。その日は、新宿にある外資系のホテルです。高層階にあるバーで夜景も美しく、ジャズの生演奏も聴ける贅沢な空間。私はカウンターで、人待ち顔で飲んでいました。週末でしたから、けっこう混雑していたでしょうか。

 しばらくして、私の右隣にスーツ姿の男性が座ったんです。顔を見るより先に、左手の薬指を見るようになったのは習慣ですね(笑)。彼、結婚指輪は着けていなかったんです。

 既婚者でも指輪は着けていない人もいますし、さりげなく彼の顔を見ようと視線を流した時です。

――もしかして…咲子?

――えっ?

 私は目をしばたたかせました。女のどす黒いもくろみなど知るはずもない彼は、屈託のない笑顔で、

――覚えてるかな? 中学の時、同じクラスだった修二だよ。

 あまりの唐突さに一瞬の間がありました。記憶をたぐり寄せ、彼がイジメから守ってくれたクラス委員の修二君だと思い出したんです。

 正義感のある彼のお陰でどれほど救われたか…。彼はスーツが似合う都会的な青年に成長していました。

15年ぶりの再会

――ひ…久しぶりね。中3以来だから15年ぶりかしら。

 私は動揺しながらも、笑みを返したんです。

――CAになって活躍してるって田舎では有名だよ。こんなところで会えるなんて奇遇だな。待ち合わせ?

――い、いえ…ひとりなの。待ち合わせていた女友達のお子さんが急に熱を出したそうで、ドタキャンされちゃって…。

 私はいつの間にか何のためらいもなくウソが言える女になっていました。でも、この時ばかりは胸がチクリと痛んだのは確かです。

――じゃあ、隣に座ってもいいかな。

――もちろん。

――じゃあ、再会に乾杯!

美や若さへのすさまじい執着に…

 そこからは互いのことを話しました。彼は大学卒業後に上京し、現在はインバウンドを対象とした美容医療の仲介をしているそうです。日々「老い」に怯えていた私に、修二君は意外なことを告げてきました。

――僕はいくつかの美容クリニックを担当しているけれど、最近の女性は、美や若さへの執着がすさまじいね。

――美しさや若さは女性にとって宝物よ。気持ちはわかるわ。

――いやあ、それが度を過ぎてる。『せっかく日本の名医を紹介されたんだから』って、患者たちは望む限りの美容整形をやっていくんだ。

 シワを消すためにヒアルロン酸注射やボトックス注射を射ちまくるのはまだマシなほうで、耳の後ろを切って皮膚を引き上げるフェイスリフト、脂肪吸引、プロテーゼ隆鼻術、エラ削り、人中短縮、唇をふっくらさせるヒアルロン酸注入、埋没法や目頭切開の二重まぶた、涙ぶくろ…僕からしてみれば、『健康的』を通りこして『人工的』で気持ち悪い。

――人工的…?

――ああ、その点、咲子はいい年の取り方をしている。理想的だよ。

――も…もうオバサンよ。

――謙遜しちゃダメだよ。君は昔と変わらずきれいだし、かわいいよ。

――謙遜だなんて…でも、ありがとう。

 褒められたくすぐったさ、そして、コンプレックスから男漁りを続けている自分がとてつもなく惨めになりました。

 しばらくして、

――修二君、結婚は?

 気づけばそうたずねていました。

――ああ、一度したけどダメだったな…バツイチだよ。咲子は?

――バツナシの独身。恥ずかしいわ。田舎で30歳と言ったら、子供が2~3人いてもおかしくない年齢よね。

――そんなの人それぞれだよ。君さえよければ、これからも時々会わない?」

またしても救ってくれた彼とは結婚も視野に

 15年ぶりの再会、そして彼なりの美容医療に対するポリシーを知り、咲子さんはバー通いをやめた。

 彼女は語る。

「実は今、修二君と交際しているんです。13歳の時にイジメから救ってもらって、またしても美や老いに対する恐怖心から救いの言葉をもらった感じ。彼に『そのままの咲子が素敵だ』と言ってもらえることで、自分に自信が持てたんです」

 ゆくゆくは結婚を視野に入れているという2人。運命という言葉は軽々しく使いたくはないが、これはまぎれもなく咲子さんを救った「運命の再会」ではないだろうか。

(了)

(蒼井凜花/作家・コラムニスト)

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