富山の名店「とんぺい」で熱々のフライに冷え冷えのハイボール…サイコ~過ぎる
第78回 富山②
1年ぶりの富山。前回は北陸新幹線の話題でテレビなどが派手に特集していた頃だ。
そのときの心残りがひとつ。名店「とんぺい」に行くことができなかったことだ。昨年は松川沿いの桜が満開だったが、今回は雪が残っていてまだ寒い。つまり熱燗がうまいということ。すかさず、とんぺいに突入だ。
外には席待ち客が1組。すると誠実そうな男性が現れ、彼らを案内してアタシの前に戻って来た。「申し訳ありません! もう少々お待ちください」。本当に恐縮しきった様子にアタシの方が戸惑ってしまう。「いやいや、急いでないので大丈夫ですよ」。5分ほどで案内され、20人座れるカウンター中央に陣取ることができた。「寒い中お待たせしました」。何度も頭を下げるこの方が2代目店主の鈴木健太郎さんだ。
とんぺいの創業は昭和43年。安くおいしいものを食べさせてくれる店として富山で有名だ。当時から変わらない店内は無駄な装飾などがなく、まさに食い物で勝負といった潔さ。入って左側に4人掛けテーブルが3つ。幅広のカウンターはゆったりと座れて、居心地がいい。早速、生ビール(462円)を注文。ジョッキの中生が、今どき500円以下! 肴のメニューを見ても、500円以上のものは刺し盛り(5種類で880円!)くらい。そこに突き出しが2品(330円)。夕方4時オープンだからか、人気の刺し盛りは売り切れ。残念!
が、メニューを見直すとうまそうなものばかり。まずはサバのニンニク醤油焼き(440円)と海老のすり身揚げ(418円)。脂がのったサバにニンニク風味の醤油がよく合っている。ご飯が欲しくなる味だ。ならば液体ご飯といこう。辛口・玄(286円)の熱燗で体を温め、矢継ぎ早に剣岳の180㏄冷酒瓶(385円)だ。熱々のすり身揚げに冷たい酒がよく合う。よし、カレイフライのタルタルソース掛け(473円=写真上)もいこう! 追加注文が決まったものの、カウンターの常連客の注文が気になって仕方ない。
客層は老若男女、とにかく幅広い
この店のお客はまさに老若男女。団体から1人客、一見から常連までと、とにかく幅広い。そのほとんどの客が満足顔で帰っていく。客の一人一人に何度も笑顔で「ありがとうございます」を繰り返す健太郎さん。その姿を見て、ジジイになって傲慢偏屈になった自分自身を振り返り、反省しきりのアタシです。
そこにやって来たのは皿からあふれんばかりのタルタルに覆われたカレイフライ。ここでホワイトホースのハイボール(418円)に切り替えよう。熱々、サックリホクホクのフライにたっぷりのタルタルをのせてバクリ! 冷え冷えのハイボールをゴクリ。サイコ~過ぎる! だいぶ腹も出来たが、肉みそ掛けごはん味噌汁付き(440円)で締めよう。ピリ辛の肉みそがイヤというほどかかったご飯に、魚のアラと野菜がたっぷり入った味噌汁。これで締めたのはいいが、ベルトが締まらないよ。お勘定時にこちらの来意を告げると、困った顔の健太郎さんが「派手なこととか、テレビとかもお断りして地道にやってきただけですから」。2代目店主の謙虚な態度に心まで温まるアタシでした。
(藤井優)
○とんぺい 富山市桜町2-1-17