2015年の放送界 「BPO」と「ドラマ」で振り返る
■良作を送り出したTBSに拍手
次にドラマだが、今年を代表する一本は、やはり「下町ロケット」(TBS系)だろう。町工場の技術者たちの奮闘と大逆転の物語は、2冊の原作を凝縮した脚本、脇役まで気を配ったキャスティングと役者たちの熱演、緩急自在の演出などが融合し、まさに“見るべき”ドラマとなった。
テレビ離れ・ドラマ離れが言われる中、この一年間に「流星ワゴン」「天皇の料理番」「ナポレオンの村」「下町ロケット」の4本を送り出したTBSには拍手を送りたい。技術面も含めた品質をキープし、ドラマ全体の底割れを防ぐ役割を果たした。何より、しっかりと作られたドラマには、たくさんの人の気持ちを動かす力があることを実証した功績は大きい。
2本目は「民王」(テレビ朝日系)だ。首相(遠藤憲一)とダメ息子(菅田将暉)が入れ替わるドタバタコメディーが、現実の政治に対する不満や不安を背景に、期せずして秀逸な風刺劇となった点が興味深い。
NHKでは、ピエール瀧が主演した「64(ロクヨン)」が印象に残る。少女誘拐事件の謎と警察内部のせめぎ合いを扱いながら、じりじりするような緊迫感と時代の空気感を表現して見事だった。さらに、現在放送中の朝ドラ「あさが来た」が視聴者の支持を集めている。幕末生まれの大店のお嬢さんが、どう流転し成長するかという実話ベースが功を奏した。同じく実在の女性の生涯を描いてきた、大河ドラマ「花燃ゆ」の残念な“迷走”と好対照だ。来年、堺雅人主演「真田丸」での大河復活に期待したい。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)