2015年の放送界 「BPO」と「ドラマ」で振り返る
【連載コラム「TV見るべきものは!!」年末拡大版】
この一年の放送界を振り返る、恒例の年末拡大版だ。まずは、3月に発覚したNHK「クローズアップ現代」やらせ問題である。
出家詐欺を扱った回で、事実とは異なる人物を登場させたり、恣意的な映像を見せたりしながら、偽りのスクープともいえる内容が流された。
BPO(放送倫理・番組向上機構)が調査を行い、11月に公表された意見書では、当事者である記者に重大な放送倫理違反があったと指摘。報道番組で許容される範囲を大きく逸脱した取材方法や表現を用いたことを強く批判した。
この意見書が異例だったのは、記者やNHKへの意見だけでなく、政権与党に対して、個々の番組に介入すべきではないこと、またメディアの自律を侵害すべきではないと強調した点にある。政権によるメディアコントロールがさらに強まることを警戒・牽制しており、BPOの矜持さえ感じさせる、筋の通ったものだった。
BPOが懸念するように、今年は政権の露骨なメディアコントロールが続いた一年だ。各局の報道局長に対する公平中立要請。「クロ現」への総務大臣による厳重注意。自民党情報通信戦略調査会が行ったNHK経営幹部の事情聴取。また自民党の勉強会での「マスコミを懲らしめるには広告収入がなくなるのが一番。経団連に働きかける」という暴言。そして、前述のBPOの意見書を軽視する政権中枢。来年は、メディア側の自覚と自律がより求められることになる。