復興阻む2つの壁 Nスペ「シリーズ東日本大震災」の見応え
3月11日の夜、NHKスペシャル「シリーズ東日本大震災」が2本続けて放送された。どちらも重要な問題提起を行っており、見応えがあった。
1本目は「“仮設6年”は問いかける~巨大災害に備えるために~」。現在も3万5000人が仮設住宅で暮らしている。しかし、もともと長期の生活には無理がある施設。亡くなる高齢者も多い。番組は、この事態を招いた原因として「災害救助法」を挙げていた。昭和22年に制定されたもので、仮設暮らしが長期化する大規模災害には対応できないのだ。
かつてこの法律の見直しが検討されたことがある。だが、応急救助の厚生省と再建支援の国土省の折り合いがつかず頓挫した。“災害救助法の壁”と“省庁の壁”。2つの壁の存在と問題点を明らかにした意義は大きい。
2本目のNスペは「避難指示“一斉解除”~福島でいま何が~」だ。国の判断によって、間もなく広い地域で避難指示が一斉に解除される。
しかし住民は、放射線量への不安、山積みの除染廃棄物、打ち切られる補償といった悩みを抱えたままだ。一方、自治体は村や町の存続への危機感から避難指示解除を急いできた。そのギャップが行政と住民、住民同士、そして家族の間での“分断”を進行させている。それは二重被災ともいうべきものであり、あらためて誰のための復興なのかが問われていた。