芸能界では誰も「ビートたけし面白くない」とは言えない
デビューしてからテレビでとにかく、頑張ろうと思って25歳ぐらいのときに「はねるのトびら」がゴールデンに上がって初の冠番組になったんです。でも結局、「待たなきゃいけないんだ」という感じになった。たとえそこで視聴率を取っても、日本のスターになれるわけでもなくて、芸人が大勢出演する27時間テレビとかになったら、たけしさんやタモリさん、さんまさんが真ん中です。4、5年目だったら、冠番組持ってようが何しようが、ひな壇の後ろの方になるんです。
もちろん先輩方がやられているのは面白いんですけど、場合によっては、あんまり面白くないと思う時もやっぱりある。それに対して当時の僕は面白くないって言えなかったんですよ。
でも、ある時、「これ、やばいな」と思ったんですね。例えば、このままテレビがどんどん、“おばちゃんメディア”になっていったら、自分もそこに合わせなきゃいけない。おばちゃんに合わせていって、会社ごと崩れていっても、「テレビをもうちょっと面白くしましょうよ」と言えないわけです。
これはやべえぞと思って、「もっと面白くしましょうよ」と言えるようになるにはどうしたらいいかと考えたときに、「テレビ以外の食いぶちをつくればいいんだ」って気づいたんです。食いぶちさえあれば、干されるのを恐れる必要はないし、対等に話ができます。吉本興業に対しても「僕、それはやれません」ときっちり話せないと、巻き添えを食らってしまう。
今の僕は芸人であり絵本作家です。肩書はどうでもいいんですが、いろんな食いぶちを用意して発言権を持ちたかったんです。