万引で逮捕された通算350勝・米田哲也から直接聞いた幻の巨人移籍
晩節を汚した、とはこのことだろう。史上2位の通算350勝を挙げた米田哲也の万引逮捕の愚行である。その理由が“生活苦”とは……。
その米田から直接、こんな話を聞いたことがある。
「オレな、巨人にトレードで移籍するはずだったんだ。信じられないだろうけど。移籍発表の寸前でひっくり返った。ある人に止められてね」
巨人V9の後半のことだったという。巨人の9連覇は1965(昭和40)年から始まったのだが、プロ入り1年目の62年から5年間で101勝(3度の20勝)したエースの城之内邦雄が67年から下り坂に差しかかり、金田正一は400勝を挙げたV5の69年限りで引退した。堀内恒夫と高橋一三が頑張っていたものの、投手陣に不安があった時期である。
常勝巨人を維持するため、監督の川上哲治は王貞治、長嶋茂雄の後を打つ5番打者を他球団から獲得していた。
西鉄の高倉照幸、東映の吉田勝豊、広島の森永勝也らの一流打者である。同時に投手補強に手を伸ばしていたのは当然だった。