役者と真剣勝負 「俺が正しいのか、おまえが正しいのか」
碓井 倉本先生はドラマの撮影が始まる前、役者たちが集まって行われるホン読み(台本の読み合わせ)にも立ち会う、“唯一無二の脚本家”として知られています。
倉本 ハハハ。「前略おふくろ様」(日本テレビ系、75年)では細かく立ち会っていましたから、直接役者に説明できてたんですね。それでも大河「勝海舟」(NHK、74年)以降は、演出家や監督に口出しをするとうまくいかないっていう気配があって。いまでは大御所みたいに見られて、皆、僕には逆らわないんですよね。逆らわないから分かったのかなと思うと全く理解していない。伝わっていないんです。
碓井 その点、「やすらぎの郷」には倉本作品への出演歴のある俳優さんがたくさん出ていらしたから、かなり安心だったんじゃないですか。
倉本 僕のことを分かっている人たちは的確に演じてくれますからね。
碓井 「勝海舟」の話が出ましたが、先生がホン読みに出席しなくなったのはいつ頃からですか。僕がスタッフとして参加した笠智衆主演の「波の盆」(日本テレビ系、83年)では来てくださいましたよね。