汚れたミルク/あるセールスマンの告発(2014年・印、仏、英)
貧しいパキスタン人アヤンは結婚後、ダメモトで受けた世界的飲料企業の採用試験に合格。持ち前の行動力でトップセールスマンに。
だが、必死で病院に売り込んだ粉ミルクが原因で、多数の乳児が死亡している事実が判明。骨と皮だけで体中にチューブをつけられた乳児たち。そのシーンは実際の映像が流れ、胸が痛む。
衝撃を受けた彼は、裕福な暮らしを捨て、辞職して会社を訴えるが、家族が危険な目に。葛藤する夫に妻が投げた励ましの言葉だ。
巨大企業の不正に勇気をもって立ち向かう内部告発だが、劇中、上司の指示で取引先に日常的に賄賂や付け届けをして業績を上げていたことが分かる。しかも、被告の企業との金銭取引に応じようとしていたテープが発覚し……。
くさいものにフタで、会社の汚点に目をつむっている人は、身につまされるだろう。正直、モヤモヤする。
しかし、ボスニア出身の監督が焦点を当てるのはあくまでも主人公の人間だ。正義に奮い立っても、家族が脅され、取引に応じ、ストレスでヘロヘロになる姿を追う。人間の弱さと家族の強さをテーマにした映画と見ると、しっくりくる。
同じくアジアやアフリカで強引に開発を進める中国の世界進出ぶりは、この映画とダブる。結局、被害者は弱者だ。不正を暴くのが正義だとしても、その行動は非常にリスキーだとつくづく思い知らされた。