ゴーストライター(2010年、仏・独・英)
数々のVIPの自叙伝を執筆したゴーストライターに25万ドルという高額ギャラの仕事が舞い込む。依頼主は元英国首相だが、エージェントから前任ライターは謎の自殺を遂げたと知らされる。
厄介な仕事に気乗りしなかったが、渋々受諾すると、元首相が住む米東海岸の孤島へ。そんな折、元首相をめぐる国際法違反疑惑で、マスコミ報道が過熱するが、ライターは前任者の資料を調べていくうちに元首相の怪しい過去の一端を知り、前任者の死にも不審を抱く。
英国政界の元トップの裏で動く謎の力。そこに気づいたことで、ゴーストライターの命は危うくなる。元首相の美人妻は色仕掛けで接近。過去の女性関係を根掘り葉掘り質問。男がどんな関係か表現できないと答えたときのセリフだ。
そこからの展開は、ゆったりとしながらも一つ、また一つと謎が静かに提示されていく。ラスト、最大の謎に迫ったゴーストライターが車にひかれて死ぬ結末は非常に分かりやすいが、そこに至るまでの見せ方がとにかく見事。さすが、ミステリーの巨匠ロマン・ポランスキーだ。
ハデな演出をせずに、じわじわとミステリーを構築。分かりそうで分からない、黒幕の出し渋り方もうまい。ユアン・マクレガー演じるゴーストライターも軽妙な演技ながら、謎の力への恐怖心をしっかり演じていて好感がもてる。
スコッチのグラスを傾けながら楽しむにはうってつけ。最高の大人の時間を堪能できるはずだ。