引退はマイナスだった…忘れ去られることは一番の致命傷
この頃、私にはお金がなかった。稼ぐあても見当たらない。空前のバブル景気は終焉を迎え、日本経済はすっかり影に覆われている。こんな仕事は今しかない、もう二度とないのではないかと、受ける方向へと傾いていった。
よく聞くと、1億円は事務所と折半という話だった。一時引退から、お金がなくて生活のために活動を再開して3カ月あまり。お世話になってはいるけれども、折半はないでしょう。ここを辞めて、個人で受けようか。そして、やはりこの世界から身を引こうか。そんな考えがちらりと浮かんだ。それを母に伝えたところ、悲しそうに言った。
「そんなつもりで産んでないよ」
それで断ることにした。とはいえ一度は前向きだったこともあり、事務所に居づらくなっていく。それで写真集「吐息を奪って」を置き土産に、辞めることになった。写真集では、私の中で最大限に譲歩して、セクシーな下着までの撮影が行われた。
私の人生で一番つらい時期だったと思う。
人間不信で辞めたのに、また人間不信になるようなことばかりだ。