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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

編集作業で身に染みる緒形拳さん「芝居がヘタ」発言の真意

公開日: 更新日:

 200人以上が出演した今度の現場でも、なるべく芝居しない芝居になるよう心掛けていたのだが、芝居くさく見える若い役者には泣かされた。ラサール石井氏や隆大介さん、小木茂光氏や升毅らは自然にしゃべって自然に怒鳴ってくれたが、若い役者の「粗隠し」編集にてこずっているありさまだ。

 気分直しに我らのバイブル「ゴッドファーザー」を見直した。いかに編集したら真に迫れるか、何度も巻き戻して勉強し直した。三男坊マイケルがステーキ店で、敵のソロッツォと警部を射殺するあの高まりは圧巻だ。アル・パチーノがスタジオの重役にあの場面ラッシュを見られて、やっと役を認められたという。

 カットつなぎをよく見ると、仕掛けが見えた。ソロッツォは額に1発目を食らうが、額に一瞬、血のりペイントが付着し、頭の後ろに赤いパウダーが煙のように拡散するだけの効果だ。それで即死したように映る。警部の方にも変な画像が見える。正面から喉元に1発目を食らってもんどりうつが、その時、額に2発目に食らうはずの弾痕の仕掛けが写ってしまっている。しかし、瞬間と瞬間が連結すると本当に殺されたようにしか見えない。彼らの自然な芝居に見とれてしまうからだ。“魔法的な編集術”がそれを助けている。我らのバイブル映画は「粗隠し」など必要なく出来上がっている。役者が人間らしく演じている。そこにいつも感心させられる。

 やれやれ、今夜も徹夜か。

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