“がん公表”も悪くないと教えてくれた入川保則さんの生き方
だが、余命宣告を公表したことで、闘病しながら映画を1本撮ろうじゃないかという話が湧き起こり、ゆかりの製作スタッフが集まった。もちろん入川さんの人柄もあるだろうが、故・松方弘樹さん、秋吉久美子、前川清といったビッグネーム、小倉一郎、窪塚俊介といった脇役仲間も手弁当状態で「ワンシーンでも共演したい」と集まったものだ。
これには入川さん、大感激だったそうで、「うれしい」を連発した。その後もベッドサイドでの口述筆記も含めて、エッセーを1冊出版したのだ。1月の余命半年宣告から、その年のクリスマスイブに永眠されるまで入川さんは明るい表情で過ごしたそうだ。事務所の社長や身近な人たちも、穏やかな気持ちで寄り添うことができたという。
大病を患った時には、芸能人はもちろん、そうではない人も、そのことを公表するかどうか非常に悩むものだそうだが、公にすることは悪くないと思う。「がんばれ」と応援する声も届くし、回復を祈る気持ちも伝わってくる。直接、病気に効果があるものではなくても、気持ちの上で前向きに歩むことに力を加えてくれるだろう。