<4>“ばっばん”は風邪でも腹痛でもヤクルトを薬の代わりに
「小学校1年生の1学期が終わると、担任の先生が私を含めて5人の生徒を引率して文房具屋に行き、『2000円まで好きな物を買っていい』と言います。たくさんの文房具を買ってもらった帰り道、5人で『クラスの皆に黙ってような。先生は僕らが好きでひいきしてくれてんだから』と話し合った。ずっとそう信じてたんです。それが2年生になって担任が代わっても同じように文房具を買ってもらえる。ばっばんに聞いたら、『うちは優秀な家族なんで、国から援助金が出るんじゃ。生活保護じゃ』と言われました」
小学生には生活保護の意味がわからなかった。5人は卒業するまでずっと仲良くしていたという。
「後になって家が貧しいから給付されたとわかって惨めな思いをしました。5人が小学校の同窓会で会うと、必ずその話になります。『自分の子供たちにはあんな思いをさせたくないから一生懸命働いた』って皆が言いますね」
歌之介の目が潤んだ。
(つづく)
▽本名・野間賢。1959年、鹿児島県生まれ。高校卒業後の78年に3代目三遊亭円歌に入門。前座名は歌吾。82年、二つ目昇進。三遊亭きん歌と改名。87年、先輩18人抜きで真打ち昇進。初代三遊亭歌之介となる。19年、4代目三遊亭円歌を襲名。