神田松之丞の芸と毒舌の根幹はグレーゾーンとアンモラル
そして立川談志の魅力にもハマった。大学時代は、談志師匠が好きだという講談、浪曲、漫才、演劇、歌舞伎などあらゆる芸に生で触れていった。最初、講談を見た時、「つまらないな」と思ったという。けれど、談志は好きだと言っている。自分の感性が未熟なのかもしれない。そう思って、講談会に通い続けてみた。
1年ほど経ったころ、6代目神田伯龍の「村井長庵・雨夜の裏田圃」に衝撃を受けた。人を殺す時に、雨に気を取られるという描写があった。「自分がやりたいのもこういうアンモラルな世界観を表現することだ」(講談社「現代ビジネス」19年6月10日)と気づき、講談の道に進むことを決意したのだ。
「グレーゾーン」と「アンモラル」――。それが神田松之丞の芸と毒舌の根幹にあるのだろう。
2016年ごろから松之丞は真打ち昇進への思いを度々口にし、「真打ちのお披露目は歌舞伎座で」と言っていた。
「自分が言い続けていれば、人間関係も動く――。そう思っているので言い続けようかな、と」(文芸春秋社「文春オンライン」17年2月21日)