「アルゴ」ゴーンの逃走が映画になったらこんな雰囲気に
イラン民衆の怒りのデモ、クレーンで吊るされた死体、米国内でのイラン人への暴行などをニュース映像を織り交ぜて再現する。冒頭の大使館占拠はなかなかの緊迫感。館員は必死で重要文書を廃棄。武装した群衆は、塀を乗り越えて建物になだれ込み、怒声を浴びせながら彼らを縛り上げる。館員の恐怖が伝わってくる。
米国とイランの複雑な関係は今に始まったことではない。本作は最初の2分で両国の不穏な関わりを解説。パーレビが秘密警察「サヴァク」を組織し、イランが拷問と恐怖の時代を迎えた原因は石油利権を求めて前政権を崩壊させた英米の陰謀だったという。米英への批判的見解も盛り込んだわけだ。
見どころはメンデスが館員を空港から脱出させる場面。さまざまな突発事態が発生するハラハラドキドキの展開だ。ゴーンの逮捕・脱出劇が映画化されたら、こんな雰囲気になるのだろう。
ラストで、メンデスは作戦の資料を公文書として提出する。資料は長らく機密扱いで97年に公開され、この映画の製作につながった。日本政府のように勝手にシュレッダーにかけていたら、本作が日の目を見ることはなかっただろう。
(森田健司)