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井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

時代が移っても変わらぬ孤立 我がテーマも何ら変わらない

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 ウイルス感染が世界経済までぶち壊している。不況不景気でも映画館だけは客を呼ぶというが、さすがにどこの小屋も不入りのようだ。「濃厚接触」は流行語大賞かも知れない。外に出て憂さ晴らしも許されないなら、ネットで映画でも見るかと配信サイトを探してみたら、昭和期の作品にまざって懐かしの我が拙作たちも並んでいたので、急にタイムトンネルに吸い込まれていった。

 夢と欲望を生きた戦後昭和。アメリカ館の「月の石」を見たい客が何時間も行列持ちし、「辛抱と長蛇」の残酷博とおちょくられた大阪万博が幕を閉じたら途端に、いざなぎ景気も止まり、高度経済成長も終わったのは1971年だった。そこへ現れたのが米映画のリアリズム革命でもある「ゴッドファーザー」。これに倣って作られたのが実録「仁義なき戦い」で、ニューシネマと新しいやくざ映画にたちまち感染して、映画熱にうなされてしまった客のひとりが無職で文無しの自分だった。

 振り返ると、我らも社会のあぶれ者、はみ出し者を描いてきた。一般デビュー作「ガキ帝国」では67年の大阪ミナミを闊歩する少年院上がりの不良どもだった。おとぎ話の「二代目はクリスチャン」でも、主人公のシスター・今日子はヤクザの2代目を襲名して復讐のために斬り込んだ。「犬死にせしもの」では敗戦直後、ビルマのインパール作戦の地獄を生きた陸軍上がりの無法者が海賊になった。「岸和田少年愚連隊」は76年の大阪の田舎町で格差教育で行き場のなくなった落ちこぼれたちだった。「パッチギ!」は68年、京都東九条ゼロ番地で生きた在日の高校生が喧嘩に明け暮れた。「ヒーローショー」は2010年、東京で生きもがく“失われた世代”のはぐれ者たち。「黄金を抱いて翔べ」では金塊を強盗する夢にとりつかれた虚無主義な流れ者たちだった。

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