志村さんが愛した麻布十番のガールズバーは“今宵も営業中”
安倍総理から日本初の緊急事態宣言が出された7日の夜、六本木の街にはスーパーの買い物袋を提げた住民が歩くだけで、酔客は1人もいなくなった。およそ7割の店がシャッターを下ろし、営業休止の張り紙をしている。客が入っているのはチェーンの牛丼屋くらい。その他の居酒屋・寿司屋・ステーキ屋などはマスクをした店員が出入り口付近で立ち尽くし、誰もいない路上を眺めている。普段なら大勢いる客引きすら見掛けることはなかった。
とある居酒屋の店主に話を聞いた。
「スタッフの生活を守るため、うちは営業継続の方針です。しかし今日は1人もお客さんは来ていません。テークアウト弁当も用意しましたが、売れたのは数個。大家さんと賃料の交渉もしましたが聞く耳もありませんでした。もう限界が近いことは分かってますが、休んだら売り上げゼロが確定するので、もはやわずかな可能性にかけてやるしかありません」
悲愴感漂う店主の声は、総理や都知事には届いているのだろうか。そんななか、六本木の隣町である麻布十番には酔客で賑わう店があった。路面店でガラス張りのため丸見えの店内では、Tシャツ姿の女性スタッフが元気よく接客している。お客さんは数人だが、みんなテンションが上がっているので外まで大きな声が響いていた。
実はこの店、亡くなった志村けんさんが週5回は通っていたというガールズバーだ。こんな時期に営業なんて不謹慎だという意見もあるだろう。一方で営業を自粛したら志村さんがこよなく愛したお店のスタッフの生活の保障はない。天国の志村さんは、いったいどちらを望んでいるのだろうか。