著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

戦争で“生き抜いた”というより“生きられた”日本人の記録

公開日: 更新日:

 大学教授でもある小熊氏の、実父が早稲田実業(中学校)を出て会社に勤め始めた昭和19年、19歳で徴兵され、満州の関東軍の下に配属される。本籍地がたまたま新潟だったため、連隊の師団が駐屯する満州になったのだ。そして翌年、敗戦。武装解除され、さあ引き揚げだと思ってたらそのままソ連軍捕虜となり、シベリア行きの列車に乗せられ、極寒地で3年間も抑留される。何とか帰国してからの流転人生もまた凄い。戦争から平和、高度成長とは何だったのか。戦争が人をどう変えたかが克明につづられる。“生き抜いた”というより“生きられた”日本人がそこにいた。歴史小説など足元にも及ばない、迫真の聞き取り調書だ。役者なら、おおいに勉強してくれと思った。

 自粛の盆休み。戦争の本を読み返すと時を忘れた。樺太(サハリン)の居留民や皇軍兵士にも地獄が待っていた。終戦日など無視して侵攻してきたソ連軍に、降伏するどころか領土を死守せよと軍本部から命じられて戦い、家族で集団自決したり、捕まって強姦されたり。このクソ暑い1週間は、終戦のことを考えさせられるばかりだった。


 玉音放送の前日でも、大阪に大空襲があった。1トン爆弾(どんな威力か想像もつかないが)、700発も投下され、昼の1時ごろ、支線が交差するホームに千数百人の乗客であふれる国鉄京橋駅も地獄と化した。小学生の頃、近くに勤めていた親父にガード下の寿司屋に連れていってもらったが、それは知る由もなかった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動