田村淳さん「遺書を書いたら大事なことか明確になった」

公開日: 更新日:

夢は大切だけど、リアルに生きることとは違う

 ――日本社会ではとりわけ死について話すことがタブー視されます。

 死って、すごくネガティブなことで、悲しいことばかり連想してしまうんですけど、でもみんな間違いなく死に向かっているので、その間に自分がどう生きたいかを話し合うことが遺書につながると思うんです。日本人はどう生きたいかすら、あまり語りたがらないし。学校教育では「夢を書きましょう」と言いますが、夢は夢で大切ですが、リアルに生きることとは違う。もっとリアルに生きるとか死を捉えることで、人生が充実するんじゃないかと、僕はいまのところ仮定しています。このサービスは人生を豊かにするものなんだと。

 ――遺書動画で人生を豊かに?

 座禅すると自分に向き合うじゃないですか。1人キャンプもそうです。それらと感覚が似ていて、スマホにあるサービスで簡単に自分と向き合うことができるんです。忙しい現代人は誰もが自分探しの旅に出られるわけではないですから。でも遺書は、死ぬ気にならないと絶対に書けないものなので、自分に向き合い、自分にとって大切なことが見えてくる。結果、人生が豊かになる。

 ――最近はエンディングノートなども出てきていますよね。

 エンディングノートは、どちらかというと死期が近づいている人へのアプローチだと思うんです。僕はこのサービスを、子供が生まれたとか、社会的な地位に就いたとか、30~50代の人に使って欲しい。早い段階で人生の気づきがあった方がいいと思うんですよね。

 ――先日、ALS患者が亡くなったことで、国会では尊厳死の問題などが議論される気配もありますが。

 進まないですよね。死に関する議題って、票につながらないし、国民が関心を持っていることではないですから。死に対しての意識が高まり、死に方の多様性を考えましょうよ、という世の中の空気がつくられないと、政治家の人は動いてくれないだろうから。

 ――まずは世間の空気が変わらないと、ということですね。そういえば、以前、田村さんが政治家になるため選挙に出馬する噂もありましたよね。

 そう。よく言われるんですよ(笑い)。でも出たいという気持ちはあんまりないですね。政治にはすごく興味があるんですけど。いまは他にやりたいことがたくさんあるので。遺書を書いて、やりたいことに気づかされたんです。

(聞き手=小塚かおる/日刊ゲンダイ)

▽たむら・あつし 1973年、山口県下関市生まれ。91年県立下関中央工業高校卒業。93年、田村亮とロンドンブーツ1号2号を結成。「ロンドンハーツ」(テレビ朝日系)などテレビのバラエティー番組を中心に活躍。2019年4月から慶応大大学院メディアデザイン研究科入学。同年11月にITベンチャー「itakoto」を起業し、会長CEO。著書に「即動力」(SB新書)、「日本人失格」(集英社新書)など。

■遺書動画サービス「ITAKOTO」

 専用のアプリをスマートフォンなどに取り込み、遺書の朗読などの動画を撮影してアップロード。閲覧専用のURLが交付されるので、動画を見て欲しい人に伝えれば、共有できる。お試しの1通は無料、保存期間1年。それ以降は有料で、保存期間無制限。1通分のスタンダードプランが月額120円(税込み)。2~5通分のファミリープランが380円。無制限のプレミアムプランが480円。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  4. 4

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  5. 5

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  1. 6

    広末涼子容疑者は看護師に暴行で逮捕…心理学者・富田隆氏が分析する「奇行」のウラ

  2. 7

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  3. 8

    やなせたかしさん遺産を巡るナゾと驚きの金銭感覚…今田美桜主演のNHK朝ドラ「あんぱん」で注目

  4. 9

    フジ反町理氏ハラスメントが永田町に飛び火!取締役退任も政治家の事務所回るツラの皮と魂胆

  5. 10

    女優・佐久間良子さんは86歳でも「病気ひとつないわ」 気晴らしはママ友5人と月1回の麻雀

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    中居正広氏《ジャニーと似てる》白髪姿で再注目!50代が20代に性加害で結婚匂わせのおぞましさ

  2. 2

    中居正広氏は元フジテレビ女性アナへの“性暴力”で引退…元TOKIO山口達也氏「何もしないなら帰れ」との違い

  3. 3

    佐藤健は9年越しの“不倫示談”バラされトバッチリ…広末涼子所属事務所の完全否定から一転

  4. 4

    広末涼子容疑者は看護師に暴行で逮捕…心理学者・富田隆氏が分析する「奇行」のウラ

  5. 5

    パワハラ告発されたJ1町田は黒田剛監督もクラブも四方八方敵だらけ…新たな「告発」待ったなしか?

  1. 6

    矢沢永吉「大切なお知らせ」は引退か新たな挑戦か…浮上するミック・ジャガーとの“点と線” 

  2. 7

    中日井上監督を悩ます「25歳の代打屋」ブライト健太の起用法…「スタメンでは使いにくい」の指摘も

  3. 8

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 9

    広末涼子容疑者「きもちくしてくれて」不倫騒動から2年弱の逮捕劇…前夫が懸念していた“心が壊れるとき”

  5. 10

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは