インパール作戦を描いたNHK朝ドラ「エール」への不満
かの戦争中にアジア各地で亡くなった日本人は350万人といわれ、110万柱の遺骨がいまだに収集されていない。朝ドラの戦争表現が、そんなひどい現実を知るきっかけになれば、意義深いものとなるだろう。
■古関裕而は戦後も精力的に曲を作り続けた
ただし、主人公の描き方については、不満が残る。モデルとされる古関裕而は音楽で戦争に協力した。数多くの軍歌を作り、若者を戦地に送り込む手助けをした。劇中では、それを悔いて自責の念に駆られるシーンがあったが、果たしてどうだろうか。彼は戦後も精力的に曲を作り続けた。あの山田耕筰も100曲以上の軍歌や戦時歌謡を書いている。これは他の先進国では考えられないことだ。
ドイツの作曲家リヒャルト・シュトラウスやオランダの指揮者ウィレム・メンゲルベルクは、ナチに協力したことで活躍の場を失った。ムソリーニに協力したイタリアの作曲家ピエトロ・マスカーニは全財産を没収されている。
日本人は寛容で「水に流す」という考えがあり、過去の罪を厳しく問うことは少ない。戦争を主導した面々も、終戦時には多くの文書を処分し、証拠を隠滅した。その悪しき伝統は今も残っていて、安倍政権では文書の改ざんや処分が当たり前のように行われた。戦争のけじめをつけないまま、75年もの時間を過ごしてきた弊害は大きい。