インパール作戦を描いたNHK朝ドラ「エール」への不満
NHKの連続テレビ小説「エール」がインパール作戦が展開されていたビルマでの戦闘シーンを描き、話題になった。この枠は女性を主人公にすることが多いため、戦場を描くことはまれだ。それが今回は朝食の時間帯であっても、銃弾や砲弾が飛び交うシーンを丹念に描いた。視聴者の多くは、さぞ驚かされたことだろう。
今作の撮影は、新型コロナウイルスの影響で2カ月半もストップしている。その間に描写もより鮮烈になるように書き直したと聞く。東条英機内閣の閣僚のひとりでA級戦犯に加えられていた岸信介を祖父に持つ安倍さんが退陣したことも追い風になったのかもしれない。
戦場に駆り出された若者の多くが命を落とすことになった元凶は、国策を誤った当時の権力者にある。そのことがクローズアップされかねない戦争表現は、安倍さんにとって歓迎すべきものではないだろう。政権が続いていれば、制作陣にプレッシャーを与える可能性はあったと思う。
私が団長を務める六本木男声合唱団ZIG―ZAGでは2011年から有志を募り、かつてのアジアの激戦地を巡る慰霊献歌の旅を行っている。インパール作戦の舞台となった白骨街道とアラカン山脈も訪れた。今なお行くこと自体が困難な場所であり、道なき道を満足に食事も与えられず重装備で行軍を強いられて亡くなった方々のことを思うと、いたたまれなくなった。