京アニ新作「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が泣ける
■「愛してる」の言葉を知るために
もちろん、ストーリーの秀逸さにも胸を打たれる。主人公の少女・ヴァイオレットは戦場で武器として使われるために育てられた。そんな彼女を拾い、初めて「人間扱い」をしてくれた少佐が最後に言った「愛してる」という言葉の意味を知るために、彼女は「自動手記人形」と呼ばれる代筆屋の仕事を始める。その過程で人々の愛や思いに触れ、人として大切なものを知っていく姿を描いた作品であるが、全体を通して描かれているのはやはり「愛」だ。「愛する」というのは、どういうことか。大人になっても、明確な答えを持っている人は少ないだろう。
この世には人の数だけ、愛の形が存在している。愛しているからこそ、遠ざけ、素直になれない時も多い。そして、そんな愛を伝える手段として本作で用いられているのが「手紙」だ。作中で紡がれる手紙は、「私たちは愛を知り、その思いを伝えるために生まれてきた」という普遍的なテーマを私たちに提示してくれた。
そして魂が震えるほどの京アニの美しい描写は、決して絵やコマとしての美しさではなく、アニメーターの方々の思いが込められていると思えてならなかった。上映後、周りを見渡すと、赤い目をして鼻をすすっている人がたくさんいた。「鬼滅の刃」だけでなく、ぜひこちらも観賞してみて欲しい。