「鬼滅の刃」よりすごい「くまモン」作者のライセンス料は

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目指せ!夢の著作権生活

 倒産や人員削減など気のめいるニュースばかり。そんな中、映画鬼滅の刃」の大ヒットは明るい話題のひとつ。作者の吾峠呼世晴さん(31)には莫大なライセンス料が支払われ、もう一生食うに困ることはない。どれくらいの実入りが期待できるのか?

 ◇  ◇  ◇

 興行収入250億円突破の映画のほか、即席麺や缶コーヒー、ガムにふりかけ、レトルトカレー――、鬼滅の刃のライセンス商品を数え上げたらきりがない。

 その経済効果は累計2000億円とされる「妖怪ウォッチ」に匹敵するとされ、著作権者には莫大なライセンス料が支払われる。競馬の過去最高配当は単勝5万6940円(2014年4月26日サラ系4歳上500万円以下)、3連単が2983万2950円(12年8月4日サラ系2歳新馬)だが、どちらにしても夢のある話だ。

「キャラクターには著作者に認められた著作権が発生します。ただ、ウサギや犬などを図案化したものは他の作品と似通ってしまうため、盗用問題が起きてもオリジナルであるかの証明は難しい。そこで特許庁に『商標』登録を出願し、類似キャラクターが出ないようにします」(都内のある弁理士)

 商標は、文字、図形などで構成され、キャラクター画像も認められる。海外での模倣を防止するため、かつては国ごとに商標登録を行っていたが手間や費用がかかるため、現在は国際登録制度(マドリッド協定)がある。日本のほか、米国、EU、中国や韓国も加盟国になっている。

 キャラクター商品は、その権利者から、ライセンス(許諾)を受けた者(企業)によって製造・製作される。漫画家にとってこれはメリットが大きく、「アンパンマン」の原作者の故やなせたかしさんは生前に「アンパンマンはとてもいい子で、年に3億~4億円はキャラクター使用料で稼いでくれる」と話していた。ちなみに、世界的にも有名な「ハローキティ」でおなじみのサンリオはキャラクター使用料による収益だけで年300億円以上とされる。

「日本弁理士会の資料によると、キャラクターのライセンス料は平均4~6%で、有力キャラなら8~10%になります。鬼滅の刃の関連商品の累計売上高が2000億円だとすると、5%で計算しても100億円前後が権利者に入ります」(前出の弁理士)

 鬼滅の刃の商標出願人・権利者は「集英社」になっているため、そこから契約に応じた金額が作者の吾峠さんに振り込まれることになる。

「およげ!たいやきくん」は子門真人が5万円で売却

 こちらまで笑顔になる話だが、実は鬼滅の刃以上に稼いでいるキャラクターがいることをご存じだろうか。

 熊本県の「営業部長」として今月も無休で働いている「くまモン」だ。 くまモンのキャラクター商品の年間売上高は昨年で1579億円。11年からの累計売上高は8100億円を超えており、1兆円の大台も目前。作者には目の玉が飛び出そうな大金が待っている。

 だが、最初にタネ明かしをしてしまうと、くまモンの作者である水野学氏(48=グッドデザインカンパニー代表)にはライセンス料は支払われない。10年に総合プロデューサー小山薫堂氏の紹介でくまモンを考案したが同年に著作権を熊本県に売ってしまい、権利が消滅しているからだ。

 当時38歳の水野氏は業界ではすでに名の知れたデザイナーだったが、「お金が一円もないという夢を見なくなったのは40歳を越えてから」と後に語っているように、それほど羽振りがよかったわけではない。

 熊本県に“権利を譲ってくれ”と要請され、その時点で本人も、くまモンがどれほどヒットするかは未知数であり、要請に対し「よかばい、よかばい」と快諾したことは容易に想像がつく。

 その買い取り額は非公表となっているが、自治体が依頼するマスコットキャラクター制作の一般的な相場は3万~10万円で、著作権を一切放棄したとしても100万円前後と噂されている。かつては、「およげ!たいやきくん」の歌唱実演の権利を子門真人が5万円で売ってしまったため、大ヒットしてもおいしい思いができなかったというエピソードがあった。

 くまモンの著作権を水野氏から買い取った熊本県も当初は売れる自信がなかったのか、10年8月の最初の特許庁への商標登録はゴミ収集用袋や文房具類など1区分の出願にとどまっている。商標登録料は2万8200円×区分数によって徴収されるため、やたらと出願しても損をするからだ。

 しかし、熊本県がライセンス料を無料にしたことで人気に火が付き、12年3月と同7月に生理用ナプキンや布団カバーなども追加。翌年は「KUMAMON」でも商標登録している。

「くまモン」は損して得取れの好例

 もちろん、くまモンの大ヒットはライセンス料を無料で開放したことが大きい。むしろ、無料でなければ今の成功はなかったとも言い切れる。

 生みの親の水野氏にしても、くまモンの作者として知名度が上がり、大阪万博のロゴマーク選考では応募する側から審査する側に回っている。

 まさしく損して得取れの好例で、水野氏と熊本県、くまモンで売り上げを伸ばした企業の“3者3得”と誰もがハッピーだ。

 とはいえ、少しだけ気になることが……。熊本県は18年に、無料のはずのライセンス料を海外分に限って“有料”にした。利用許諾や商標管理は広告大手アサツーディ・ケイ(ADK)の子会社に委託しているが、その売り上げ分が昨年だけでも56億5792万円あった。仮にライセンス料を自治体の相場の3%としても1億7000万円ほどの収益があったことになる。

 この収益は水野氏にも分配されるのか?

「熊本県と水野氏との権利譲渡の買い取り額を含め、契約内容については一切非公表です」(熊本県知事公室くまモングループ)

 微妙な問題なのか、やや塩対応だったが、当事者でもあるくまモンはいつものようにポカン顔だ。

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