8年ぶりの新作映画「無頼」フィルムは情感の色を表現する
35ミリフィルムは製造されなくなったが、16ミリフィルムはある。ならば、その経験を生かそうと、今度の新作では全編16ミリで撮った。我らはフィルムの質感で人、モノ、コトを見つめてきた世代だ。フィルム上の無数の色素たちは何層にも立体的に重なりながら、人の顔色やモノの微妙な「中間色」を出している。でも、デジタル画面の色のピクセルは何百万個と並んでいてもそれは平面なので、どうしても絵の具で塗り分けたように見え、被写体の曖昧で何色だかよく分からない色の混ざり合い方は表せない。そんなことは現場のカメラマンが一番分かっていながら、でも、便利なデジタルカメラを使い、画面の空気感や奥行きを殺してしまっているのが実情だ。
J・ボンドでも無法者でも、映画はヤツらの情感の色を捉えるものだ。だから今度も、もう誰も使わなくなったフィルムで撮った。「昭和感」を出したつもりなので、その懐かしい違和感も味わってほしいな。
<告知>井筒監督8年ぶりの新作、映画「無頼」が12月12日からK’sシネマほか全国順次公開!