談志師匠宅で留守番中にあの暴走事件は起きてしまったのだ
しかし、夢にまで見た(?)談志の弟子になれたというのに、あの頃(23歳)の俺はどーして毎日イライラ……というかムシャクシャ……う~んモヤモヤとしていたのだろう……。
あの頃に戻って自分に問うわけにもいかないので、これは自分のことであっても正しい答えにはたどり着きそうもないが、漠然と思っていたと記憶しているのは「毎日毎日家の掃除してると面白い芸人になれるんですか師匠!?」「タレ(女)やへーまん(平万=1万円)、のせる(食べる)なんて落語界の符丁をうまく使えるようになると世間の人気者になれるんですか兄さん!?」と実際に声に出して言うことはなかったけれど、そーいうギャグや若者文化と、距離を置いているような空間や時間が、一刀両断してしまえば、「若かった」俺にはボディーブローのように効いていたのかもしれない……。
そんな日々の繰り返しがあったから、あの夜の俺の暴走が発生した……というなら映画「タクシードライバー」のロバート・デ・ニーロが社会の退廃ぶりに怒りを持った……みたいで少しはカッコよかったかもしれないが、俺の場合、自らの欲望のままの行動であり、そもそもやらかしたことがデ・ニーロとは天と地ほどの開きがあるので、もうただただひたすら今は亡き師匠に頭をこすりつけて謝罪するとともに、弟弟子の志の輔に最大の感謝を表すだけなのだ。