大河「青天を衝け」の死角 渋沢栄一の“カネと女”どう描く
「立派な経済人ではあるが…」
しかし……と、麻生氏は続ける。
「主人公は立派な経済人なのでしょうが、極端な言い方をすれば“金儲けの親分”でしょう。大河ドラマで主人公にするほどの人かは疑問です。それに脚本にも注文を付けたい。子供時代の栄一が母親(和久井映見)にわんぱくぶりを諭されるシーンがありましたが、“それが本当に正しいか、正しくないか、胸に手を当てて考えればわかる”なんて妙にお説教くさいところも気になりましたね。私は大河ドラマで説教などされたくありません」
メディア文化評論家の碓井広義氏も“演出の妙”について認める。
「初回、私も面白く見ました。第1回から人気の吉沢亮が演じる青年渋沢を出してきて、子供時代とクロスオーバーさせながら描くあたりは、演出のうまさですね。また、渋沢栄一は、“明治の実業家”としてとらえられがちですが、実は天保11年に生まれ、昭和6年に91歳で亡くなるまで、11の元号の時代を生きているんです。まさに激動の時代を駆け抜けたわけで、これからその時代がどれだけのスケールで、どう描かれていくのか楽しみです」
■妻妾同居の艶福家
碓井氏は死角があるとすれば、「今後の“渋沢の転向”を視聴者に分かりやすく、納得できるように描けるか」だと言う。
「青年時代の渋沢は尊王攘夷派なのですが、一橋家(徳川慶喜)の家臣となることで、江戸幕府そして明治政府の中枢、いわば体制側に入っていくのです。さらにもうひとつ。渋沢は論語読みの堅物とみられていますが、実は艶福家、つまり女好きという側面があったのです。今、森喜朗の失言問題など、女性との関わり方が社会的に注目されている中で、そのあたりをどう描いていくかでしょうね」
史実では妻妾同居生活を送り、68歳のときにも愛人との間に子をなし、子供の数はトータルで20人とも一説には50人という話もある“性豪”渋沢翁。NHKがカネと女をどう描くかに注目だ。