恐山のイタコに故・赤木圭一郎の霊を降ろしてもらったが…
古くからの風習が多く残っていた昭和。そんな風習も占いや霊感と並ぶ読者の関心事であった。よく耳にしたひとつが青森のイタコ。死者の霊を我が身に宿し、その言葉を伝える「口寄せ」を行う。たまたま青森で友人の結婚式があったとき、「恐山のイタコを取材してきては」と頼まれた。
絶対に記事にする話でもなく、気はラク。旅行者気分で青森から下北駅に向かい、そこからはバスで恐山に向かった。
9月の終わり頃の山は寒い。バスを降りると広大な岩肌をむき出しにしたような小高い山裾が広がっていた。歩を進めると次第に強烈な硫黄のにおいが鼻を刺す。
近くの土産店に聞くと、「奥まで歩いたら数人の人はいると思う」と言われ、さらに奥に。濃い霧と硫黄の煙、1メートル先もほとんど見えない。恐る恐る歩きながらイタコを探した。山の天気は変わりやすく、急に晴れると視界が広がる。白装束のイタコが、ござの上に点在するように座っていた。
「どなたの霊を降ろしますか」と聞いてきた。
1人につき何千円かの単位だったと思う。まずは自分の祖母をお願いした。